診療放射線技師

診療放射線技師はがんになりやすいの?【診療放射線技師目指している方必読】

こんにちは、hiroshiと申します。

 

診療放射線技師は放射線を扱っているからがんになりやすいの?

 

「診療放射線技師になりたいけど、放射線を扱っているからがんになりやすいの?」「がんになりやすいんだったら怖いから他の職業を目指そうかな」こんな疑問や不安を持っているため、診療放射線技師を目指すのをあきらめようか迷っている人もいると思います。

 

そんな不安や疑問を解決できる記事になっています。

 

この記事書いているぼくはド田舎の総合病院で診療放射線技師をしています。ぼく自身、診療放射線技師になる前は「診療放射線技師はがんになりやすいのかな?」と疑問に思っていました。
hiroshi

 

今回は「どうして放射線を被ばくするとがんになりやすいのか」「本当に診療放射線技師はがんになりやすいのか」を簡単に説明します。

 

放射線を被ばくしてがんになりやすい理由

そもそもなぜ放射線を被ばくするとがんになりやすいのか

 

まずは、「そもそもなぜ放射線を被ばくするとがんになりやすいのか」を簡単に説明していきます。

 

放射線を被ばくしてがんが発生するまでの簡単な流れです。

1.大量の放射線を浴びる。

2.放射線によって細胞のDNAが傷付けられる。

3.傷付けられたDNAは元の正常なDNAに戻ろうとする。

4.うまく戻れず、「DNA突然変異」を生じることがある。

5.「DNAの突然変異」が蓄積されて、正常な細胞ががん化する。

大量の放射線は100ミリシーベルト以上のことを指します。

 

シーベルトとは人が受ける被ばく線量の単位で、放射線を受ける側、すなわち人体に対して用いられます。シーベルトで表した数値が大きいほど、人体が受ける放射線の影響が大きいことを意味します。

 

環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料 第2章 放射線による被ばく2.3 放射線の単位 より引用

 

がんの原因は「DNAの突然変異」といわれています。

 

複数の「DNAの突然変異」が蓄積されることで正常な細胞ががん細胞になることがあるのです。

 

「DNAの突然変異」が起こる理由には放射線の被ばくの他にもいくつかの原因があります。

・タバコに含まれる化学物質

・食品に含まれる化学物質

・紫外線

・アルコール

などです。

 

放射線を被ばくしてからがんが発生するまでには、もっと複雑なことが起こっているのですが、わかりやすくするために省略させてもらいました。

 

超ざっくりした説明ですが、放射線を被ばくしてからがんが発生するまでの流れになります。

 

放射線を被ばくしてすぐにがんは発生しない

 

放射線を被ばくするとすぐにがんが発生するわけではありません。

 

上記で説明したように、「DNAの突然変異」が蓄積されることでがんが発生するのですが、多量の放射線を被ばくしてから、がんが発生するまでに10年〜30年かかるといわれています(小児がんをのぞく)。

 

あまり知られていませんが、高い放射線量の被ばくでがんになるリスクが増加することは、広島と長崎の原爆被害者の調査などを重ねるうちに明らかになっていきました。

 

爆心地から近いほど、放射線量は多く、遠いほど、放射線量は低くなります。

 

爆心地からの距離で、どれだけの放射線を被ばくしたかを推定できるのです。

 

高い放射線量と低い放射線量の違い

100ミリシーベルト以上の高い放射線量(爆心地から近い)の被ばくをした人たち

被ばく量が多いほどがんの発生率が高くなった。

100ミリシーベルト以下の低い放射線量(爆心地から遠い)の被ばくをした人たち

がんの発生の統計にバラツキが生じた。

 

がんの発生の統計にバラツキが生じたため、低い放射線量を被ばくした場合のがんになるリスクはきちんとしたデータがないのです。

 

低い放射線量を被ばくした場合のがんの発生率にバラツキが生じたのは、放射線だけが発がん原因ではなく、「他の原因による発がん」の可能性も考えられるためでしょう。

 

喫煙や肥満、野菜不足による発がんリスクがどの程度の放射線を浴びた線量に相当するかシーベルト(放射線の人体への影響を示す単位)に換算した結果

・喫煙:10002000ミリシーベルト

・肥満:200500ミリシーベルト

・野菜不足:100200ミリシーベルト

胸部X線検査:0.050.06ミリシーベルト

 

がんのリスク

 

関西原子力懇談会-ちょっと詳しく放射線より引用

 

喫煙だけで、2000ミリシーベルトもあります。

 

喫煙の方がよっぽど、がんになるリスクが高いのです。

 

以上が「なぜ放射線を浴びるとがんになりやすいのか」になります。

ポイント

・高い放射線量を被ばくすると、放射線によってDNAが傷つけられる

DNAの修復がうまくいかないと、長い年月を経て「DNAの突然変異」が蓄積され、正常細胞ががん細胞に変わっていく

・低い放射線量の被ばくはがんになるリスクのきちんとしたデータがないが、がんになる可能性はかなり低いことはわかっている

・放射線の被ばくだけでなく、喫煙や肥満、野菜不足も発がんリスクが高い

 

診療放射線技師だからがんになりやすいとは限らない

 

結論から言うと、「診療放射線技師だからがんになりやすいとは限らない」です。

 

あやふやな解答な理由は、「がんに絶対にならないわけではない」からです。

 

診療放射線技師として働いている人や、そうでない人でもがんになる可能性は誰にでもあります。

 

ポイント

診療放射線技師として働いていて、そのときの放射線が原因でがんになる可能性はかなり低いでしょう。

 

高い放射線量を被ばくするとがんになる確率は高くなりますが、診療放射線技師が検査で扱っている放射線の量は少ないです。

 

また、検査中に診療放射線技師が常に放射線を被ばくしているわけではありません。

 

診療放射線技師が放射線を扱うときは常に放射線から自分の身を守っています。

 

放射線から身を守るために行っているのは下記のとおりです。

・鉛プロテクター(全身、甲状腺)鉛ガラス(ゴーグル、壁)による放射線からの防護

・放射線を照射するときはできるだけ距離を取る

・常に「ガラスバッチ」を付けて、被ばく量を管理している

 

鉛プロテクター、鉛ガラスによる放射線からの防護

 

鉛プロテクターを身につけたり、鉛ガラスを隔てたりすることによって、放射線を遮断して、放射線から身を守ることができます。

 

CT室やX線撮影室などにあるガラスは鉛ガラスが使われています。

 

鉛ガラスのおかげで、放射線から身を守りつつ、患者さんの様子を見ながら撮影できているのです。

 

鉛プロテクター

株式会社 マエダ-HAGOROMO 総合カタログ No.2021.02 より引用

 

放射線を照射するときにはできるだけ距離を取る

 

次に、「放射線を照射するときはできるだけ距離を取る」とはどういうことかを説明していきます。

 

レントゲンやCTで照射される放射線はX線です。

 

X線は距離が離れることによって、力が弱まっていきます。

検査のときに使用する程度のX線は、2メートル以上離れると被ばくの量は急激に少なくなります。

 

そのため、撮影するときには部屋から出たり、できるだけ離れて撮影するのです。

 

診療放射線技師の業務のひとつに、入院中の動けない患者さんを病室で撮影することがあります。

 

そのときには部屋から出ることはできないので、鉛プロテクターを身につけて、できるだけ離れて撮影します。

 

鉛プロテクターを身に着けて、距離を取ることによって、自分自身の被ばく量を減らしているのです。

 

常に「ガラスバッチ」を付けて、被ばく量を管理している

 

放射線を扱う業務にたずさわっている人は常に「ガラスバッチ」をつけています。

ガラスバッジ

株式会社 千代田テクノル-ガラスバッジサービス より引用

ガラスバッチは1ヶ月毎に自分自身がどのくらい被ばくしているかを把握できるものです。

 

診療放射線技師のほかに、医師、看護師などが身に着けています。

 

仕事で放射線を扱う業務にたずさわっている人は放射線の被ばくの限度が法律で決められています。

放射線を扱う業務に従事している人の限度は、「1年間で50ミリシーベルト以下、5年間で100ミリシーベルト以下」となっています。

一般の人は、「1年間で1ミリシーベルト以下」です。

 

ガラスバッチをつけることによって、被ばく量が上限を超えていないか確認しているのです。

 

検査によっては長時間、放射線を扱う検査もあります。

 

ですが、きちんと放射線防護ができていたら、上限を超えるようなことはほとんどないです。

 

ちなみにぼく自身の1ヶ月の被ばく線量はだいたい0.1ミリシーベルトくらいです。
hiroshi

 

まとめ

 

今回は「どうして放射線を被ばくするとがんになりやすいのか」「本当に診療放射線技師はがんになりやすいのか」について説明してきました。

 

「どうして放射線を被ばくするとがんになりやすいのか」

・高い放射線量を被ばくすると、放射線によってDNAが傷つけられる

DNAの修復がうまくいかないと、長い年月を経て「DNAの突然変異」が蓄積され、正常細胞ががん細胞に変わっていく

・低い放射線量の被ばくはがんになるリスクのきちんとしたデータがないが、がんになる可能性はかなり低いことはわかっている

・放射線の被ばくだけでなく、喫煙や肥満、野菜不足も発がんリスクが高い

 

「本当に診療放射線技師はがんになりやすいのか」

 

結論は、診療放射線技師だからがんになりやすいとは限りません。

 

理由は下記のとおりです。

・診療放射線技師が検査で扱っている放射線量は少ない

・診療放射線技師は検査中、常に放射線を被ばくしているわけではない。

・放射線から身を守るために、以下のことを行っている

放射線防護

  • 鉛プロテクター(全身、甲状腺)、鉛ガラス(ゴーグル、壁)による放射線からの防護
  • 放射線を照射するときはできるだけ距離を取る
  • 常に「ガラスバッチ」を付けて、被ばく量を管理している

 

 

法律の改定や鉛プロテクターの品質向上などで昔よりも、放射線被ばくの管理がしっかりしています。

 

放射線を利用した検査や治療は、現代医療では必要不可欠なものです。

 

放射線によって、病気が発見できたり、治療ができたりしています。

 

診療放射線技師は患者さんに放射線を照射しているのですが、患者さんのために無駄な被ばくがないように様々な工夫をしています。

 

そんな職業の人が自分たちの被ばくの管理ができていないと意味がないですよね。

 

診療放射線技師は放射線の被ばくの管理を徹底することによって、自分たちも放射線の被害にあわないようにしています。

 

なので、診療放射線技師になったからといって、放射線が原因でがんになりやすいわけではありません。

 

 

診療放射線技師を目指していたけど、がんについて不安だった人はぜひ参考にしてください。

 

診療放射線技師を目指している方に向けて、記事を書いているのでそちらもぜひ参考にしてみてください。

診療放射線技師の専門学校に通うメリット・デメリット【専門学校の卒業生が説明します】

診療放射線技師は就職難じゃない理由【現役診療放射線技師が答えます】

 

今回は以上になります。

 

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